【シーパラこども海育塾とは】

小学生を対象に、海とふれあい、海とともに成長していく「海育」をテーマにした体験授業を実施します。海に関して様々な面から学び、生きものへの関心はもちろん地球環境にも目を向けるプログラムで、命の大切さや次世代を生き抜くライフスタイルや行動を身に付けることを目的としています。2017年度は6月から毎月1回、計10回の授業をこどもたちが体験します。

第3回 深海ってどういうところ?深海の不思議を探る潜水船を見学しよう

【レクチャー/しんかい6500と深海の生物と環境などについて】

国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)横須賀本部を訪ねました。今回の講師は広報部長の田代省三先生です。田代先生は元有人潜水調査船「しんかい2000」初代潜航士、「しんかい6500」初代潜航長であり、2つの潜水船で世界中の海をなんと318回も潜航した経験がある方です。
「みなさんはJAMSTEC(海洋研究開発機構)を知っていましたか?宇宙のことを研究しているJAXAと同じく文部科学省の研究機関で、ここでは海のことを研究しているんですよ」。塾生たちが「知っています!」と手が勢いよく手があがりました。
スライドを見ながら「しんかい6500」を紹介していただきました。写っているのは田代先生がマリアナ海溝で撮った「しんかい6500」の写真です。深い濃紺の海底に白く美しい白色の「しんかい6500」が気泡をたくさん出しています。「しんかい6500」が潜るときは浮力材と600キロの重りを載せて少しずつ潜るそうです。海底から上昇するときは重りを海底に置いてきて、浮力で浮上できるそうです。
全長は9.7m、高さ4.1m、幅2.8mで水圧に耐えられるように厚みは73.5㎜のチタン合金で出来ています。プロペラが6個、ライトは7個ついていて、直径は2mです。定員は3名で、2名のパイロットとオブザーバー(ジャーナリストや研究者など)1名乗船しますが、来年からパイロット1名でオブザーバーが2名乗れるように開発されているそうです。将来「しんかい6500」に乗りたい人は研究者になるのが一番の近道かもしれませんね、とお話がありました。
深海の映像が紹介され、生物が出てくると塾生たちはその名前を次々と言い当てることができました。「皆さん本当に良く知っていますね」と先生も驚いていました。
ほかにもいろいろお話がありました。地球上の水は97.5%が海水で、一番深いのはマリアナ海溝(10920ⅿ)だということ、太陽光は500mまでしか届いていないなどみなさんの興味が湧くお話がいっぱいでした。
さて、次は二班に分かれて実際に施設見学のスタートです!

 
 
 

【しんかい6500の見学】

スライドで勉強をした、「しんかい6500」を実際に見学します。調査から戻って来たばかりの、「しんかい6500」が整備場に入っていました。空中重量26t。本物を目の前に「大きいね!」「実物を見られるなんて嬉しいな!」とみなさん興奮気味です。スライドで説明を受けたプロペラやライトの位置を確認してみます。田代先生がテレビカメラや投光器の位置を教えてくれました。
「しんかい6500」は改良を重ね、今年もマニュピレータの位置を換えたばかりだそうです。また今後に向けて小型化をはじめさまざまな改良テーマがあるそうです。
窓から船内の様子をのぞいてみました。深海に潜るにあたり、不安をもつ研究者の人もいるそうですが、いざ潜ってこの窓から海の様子を観察し始めると「時間があっという間にたってしまう」ほどみなさん夢中になってしまうそうです。
先生から、「しんかい6500」の潜航時間は8時間で、海底6500mまで潜るときは往復に5時間かかるため海底での調査時間は3時間になります、というお話しもありました。朝潜航したら日没前には返ってくるそうです。また海底での進行速度は0.5ノットから1ノット。人間が歩く速さの半分くらいです。「質問があればどうぞ」という先生の投げかけに、塾生たちから次々質問が飛び出して、見学時間が足りないほどでした。
また整備場には無人ロボット(自立型無人潜水機・AUV)の「うらしま」も入っていました。世界最長の9.7ⅿです。マルチビーム音響測深機が搭載されているので精密な海底地形図を作成するのに役立っていますよ。

 
 
 
 

【「よこすか」の船内見学】

目の前の海に帰港したばかりの、「しんかい6500」の支援母船「よこすか」が停泊していました。全長105m、幅6m、総トン数4500t(荷物を積める大きさ)定員60名です。「早く乗ってみたい!」と声があがります。船橋(せんきょう・ブリッジ)に入り操舵室を見学します。レーダー、電子チャット(GPS)傾斜計、舵角指示器、ジャイロコンパスなど、いろいろな機器があります。
 先生の説明を真剣に聞いてノートをとっている塾生もいます。なかでも音波を使って深海の地図を作るお話はみなさんの興味をひいてたくさん質問が出ました。現在、海底の地形図はまだ5%しか出来ていないそうです。音波を使って何かにぶつかると反射した音で何があるかわかります。マルチビーム(音波の信号)が出せるようになったことで、海の深さがわかるようになりました。深海では4秒前の音が戻ってくるのに10秒かかる。そのデータをつないで地図を作成するそうです。「深海は未知の世界なんですよ!」と先生の言葉にみなさん大きくうなづいています。

[塾生の感想]

小学校5年生 たかやくん

「音で地形図を作るっていう考えがすごいと思った。まだたった5%しか地形図がないっていうのもすごい!海って分からないことばかりなんだな。」

小学校6年生 いっせいくん

「電波を出して扇状になっているマルチビームがすごかったです。機械系が大好きなんです。もっと話を聞く時間が欲しかったくらい。今日聞いたことを忘れずに、家で勉強します。」

 
 
 

【水の圧力実験体験】

高圧実験水槽棟へ移動し、水圧の実験を見学します。同じカップラーメンの容器が2つ用意されています。1つを、お水で満タンの水槽の中に入れ、そこに水深1000mを想定して水を押し込みます。100㎏の力をかけることになりますが、水槽の中の容器はどう変化するでしょうか。
「少しずつ水を押し込むので変化の様子をよく見ていてください」スタッフの方から声がかかります。200メールまできました。すでに変化が始まっています。「ここからが深海と呼ばれる深さになります。一気に押し込みます」。300、400、600…800…1000メートル。「オーッ!」「小さくなるー!」という塾生たちの声とともに容器はみるみる小さくなっていきました。びっくりしましたね。みなさん水槽から目を離さず、しっかり観察できました。
隣の部屋には、さらに1万4千キロまで水圧をかけられる高圧実験水槽装置があるそうです。足元は空洞になっているため、台の上には一度に6人しかのれません。中をのぞかせてもらいます。どうなっていたかな?

[塾生の感想]

小学校4年生 けんとくん

「ぎゅうっと小さくなっていく過程が面白かったです。iPadや本を読んで圧力で小さくなるのは知っていましたが初めて実際にみてびっくりしました。」

小学校2年生 ねねさん

「圧力の話は知っていましたが実際みてびっくりした。すごく楽しかったです。ちっちゃくなったカップにスープを入れて何杯でも飲みたい!と思いました。」

小学校2年生 まほさん

「実験水槽はすごく深くて底は見えなかったです。でも階段みたいなものが見えました!」

 
 
 
 
 

【海洋科学技術館の見学】

最後に海洋科学技術館に来ました。展示施設には「しんかい6500」の実物大模型があり実際にコックピットの中に入ることが出来ます。やはり大人気のようですね。真っ先に向かう塾生もいます。3人乗りの船内に入ることもできました。パイロット気分が味わえたかな。
生物展示室には実際に採取してきためずらしい深海生物の標本もたくさんあり「おお!すごいな!」とみなさん夢中になって見学をしています。とっても貴重な体験、見学ができました。

[塾生の感想]

小学校4年生 くおんくん

「船内は意外に広くて、のぞき窓は小さかったけどいろんなものが見えたよ。」

小学校3年生 あいこさん

「しんかい6500」は少しせまく感じたけど快適でした!小さい窓が3つありました。

小学校3年生 けんたけん

「座席はふかふかしていて快適でした。地上と同じ環境で海底に行けるようにしているのがすごいと思いました。」

小学校5年生 かえでさん

「意外と広い!子供だと4人乗れるかな。窓は小さいけれどきれいに外が見えました。」

 
 
 

講師からメッセージ

 

国立研究開発法人 海洋研究開発機構 横須賀本部 広報部部長 田代 省三さま

みなさんに、未知のものに挑戦する私たちの想いが伝われば良いと思います。海に大きな関心をもっている塾生のみなさんに「本物」を見てもらうことができて有意義でした。将来一人でも海にかかわる職業に進んでくれたら嬉しいですね。きっと他の研究者たちも自分の研究を将来的に継いでくれることを願っていると思います。